日本人の平均寿命は男女ともに80歳以上。今や人生80年というのは、当たり前になっています。
医療の進歩により長く生きられるようになった一方で、「寝たきり」や「認知症」といったことが問題視されるようになり、「健康寿命」という言葉が生まれ、盛んにメディアで取り上げられるようになりました。
「健康寿命」が叫ばれはじめてから10年。それが定着した今、「美容寿命」という新たな概念が生まれました。
【健康寿命】と【平均寿命】、似ているけれど全然違う!
健康で長生きしたいというのは、誰もが願うことでしょう。
日本人の平均寿命は、世界の国と比べても長いほうですが、平均寿命と健康寿命の差は大きく、これからますます社会問題化していくと予想されています。
平均寿命と健康寿命とは、それぞれどういうことをさすのでしょうか。
平均寿命とは
実は平均寿命って、生まれたばかりの赤ちゃんから高齢者まで、すべての年齢の寿命を足して割った数ではないって知っていましたか?
ざっくり言うと、0歳から最高齢者まで、それぞれの年齢の死亡率を出して、生まれたばかりの赤ちゃんがその死亡率通りに生きたと仮定した場合、将来これくらい生きるだろうという予測された寿命のことなんです。
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life09/sankou01.html
厚生労働省サイトより)
一般的に言われている平均寿命というのは、この生まれたばかりの赤ちゃんの平均寿命(予測)ということになります。
そのため、その年齢ごとに平均余命は異なり、たとえば40歳の平均寿命と70歳の平均寿命は違うということになります。
健康寿命とは
厚生労働省によりますと、
”WHOが提唱した新しい指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間”https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-031.html 厚生労働省サイトより引用
つまり、自分の意思で健康的にイキイキと生活ができる状態の上限をさします。
日本では特に、この健康寿命と平均寿命の差が長く、世界でも有数の長寿国ではあるけれど、そのうちの数年は寝たきりなど健康的とはいえない状態なのが問題視されています。
「ピンピンころり」とは、死ぬ直前まで元気いっぱいである日ぽっくり死ぬ、という最高の生き様ですが、寝たきりや認知症になってしまうと、長生きしてもQOL(quality of life)は低くなってしまいます。
加齢を受け入れて美しく。「美容寿命」というトレンド
美容寿命というものに正確な定義は存在しませんが、簡単にいうと、年齢を重ねても美容に興味感心を持っていられる期間のこと。
自分の外見に自信を持てること、自分の顔を鏡で見て幸せな気持ちになれること。
いくつになってもお肌の調子がいいと化粧をするのが楽しくて、いつもよりオシャレをした日はお出かけしたくなりませんか?
その自分軸の美の追求が、美容寿命というトレンドでもあります。
およそ10年ほど前「美魔女」という、年齢にそぐわない美しさがもてはやされた時代がありました。
60代なのに20代に見える!や、30代前半くらいの見た目で孫がいます!など。
今どきの感覚だと、これは少し痛々しい。
若々しくきれいなのは憧れますが、あまり実年齢と見た目がかけ離れ過ぎているというのも、違和感を与えてしまうものです。
何歳になっても「健康的で美しくあること」を追い求めてイキイキと生きること。
それは、年を重ねることで出てくる見た目の変化を否定せずに受け入れた美しさのことで、今世界の美容業界で起きている新たな変化です。
この「加齢を受け入れたうえで、その年齢にふさわしい美しさを追及する」という考え方が、美容寿命の概念でもあるのです。
健康に生きるだけでなく、「美しく生きる」という新たな人生観
年齢が上がってくると、美しくなりたいという欲求よりも健康への興味関心が上回ってくるそうです。
ところが最近では、年齢を重ねてもハツラツとした素敵な方を多く見るようになりました。
85歳の現役モデルがいたり、80歳のファッションインスタグラマーがいたりと、昔で言えば「おばあちゃん」と言われる年齢になってもオシャレを楽しんで、美しくエネルギッシュに活躍する女性たちです。
ひと昔前であれば、ある年齢になってくると世間一般的にも「高齢者」というくくりにされ、オシャレを楽しめば「みっともない」だとか言われて眉をひそめられ、自分自身でも「こんな年で、こんなのおかしいわよね」と諦めてしまっていたかもしれません。
実をいえば美容への感心は、心身の健康にも大きな影響を与えるのです。
オシャレを楽しんだり、美容に気を使ったりする行動そのものが、生き生きとした心や身体を作る活力となります。
平均寿命が上がったことで、健康に意識が向き、健康に生きるために「美しくありたい」と思うのは、女性として当たり前のことかもしれません。
アンチエイジングではなく、年齢に抗わない美の追及へ
アンチエイジングという言葉が、そこかしこで聞かれるようになって久しいですよね。
アンチエイジングとは、その言葉どおり「年齢に抵抗する」という意味合いです。
年をとると現れてくる、身体的な老いを感じさせる変化をなかったことにして、いつまでも若く美しく、という美容のスローガンです。
ところが、今や世界のトレンドはこのアンチエイジングに否定的。
年齢相応の変化をありのままに受け入れて、白髪を楽しんだり、シワやたるみまで魅力に変えていく。
そういう「無理をしない自然体の美」というものが、世界中で共感を得ています。
頑張りすぎず、ありのままに自分らしくという現代の風潮にマッチしたからでしょうか。
美を追及するというのは、「健康」のその先にあると考えがちです。
ですが、健康と美容というものは背中合わせ、表裏一体なのかもしれません。
肌のツヤやハリは、健康的な食生活、睡眠、運動があって作られます。
つまり、美容を意識すれば、自然と健康も手に入れることができるのです。
年齢にふさわしい美しさが当たり前のことになっていく?
長く生きるなら充実した人生を送りたい
この願望がたどり着いた先が、美容寿命という概念なのかもしれません。
ある意味で、長生きするだけでなく、どう生きるかという選択肢を持つことができるのは、豊かな現代ならではのもの。
高齢化社会で定年の年齢も上がり、死ぬまで現役というのが身近になってきた時代だからこそ、共感される考え方といえるでしょう。
エイジングケア化粧品や技術も日々向上し、たくさんの新しいアイテムが世に出てきています。
それは、ひと昔前のアンチエイジングとは違い、何歳になっても、どれだけシミやシワができても美しいのだという、ある意味当たり前のことが当たり前に受け入れられ、年齢を重ねても堂々と顔を上げて生きる時代へと変わったのだと感じずにはいられません。
これからは日本でも、美容寿命の考え方が広く共感され、受け入れられていくのかもしれません。