私たちになじみのある食用油のひとつ、ごま油。現在は、一般家庭で使われており、茶褐色(当記事では便宜上「黒」と呼びます)のものが主流です。実はその他に、淡い黄色やほぼ無色透明のごま油(当記事では「白」と呼びます)があるのをご存知でしょうか。
「スーパーで見たことはあるけれど、使い方がわからない」という方が多いかもしれません。今回は「黒」と「白」のごま油の違いについて解説をしていきます。
ごま油「黒」と「白」の違い。そして実は、中間色も?
現在、一般流通しているごま油の多くは、白ごま、もしくは白ごまに黒ごまを混ぜたものを使用して作られていますが、その色の違いは、製造方法によって生まれます。
一般家庭で広く使われており「ごま油」と聞いて多くの方がイメージするものは「黒」の方で「焙煎ごま油」と呼ばれるもの。ごまを焙煎したものを絞って作られますが、焙煎は高温で行われ、できあがった油は茶褐色です。
対して「白」は、加熱しない生のごまを絞ったもの。これらの無色透明のごま油は「太白油」「太白ごま油」と呼ばれています。
また「黒」と「白」の中間とも言える、琥珀色をしたごま油も存在します。こちらは低温で焙煎された「低温焙煎ごま油」というもの。「焙煎ごま油」よりあっさりしていますが、ごまの風味はしっかり残っており、どんな料理にも使いやすいものです。
ここまでのお話で、ごま油の茶褐色は、焙煎により現れたものだということがわかります。製品により微妙に異なる色の濃さは、時間や温度などの焙煎度合いによるものなのですね。
参考:当記事の「黒」とは別物で「黒ごまを原材料とするごま油」も存在し、黒ごま独特の風味があります。これらは、製品名に「黒ごま油」などとついていることが多いようです。
味や香りの違い
「黒」には、香ばしいごまの香りが強く残っており、食欲をそそります。味わいとしては「白」と比べるとほのかな苦味を感じる場合もあります。
対して「白」はあまり味がなく、ほのかにごまの香ばしさが残る程度か無臭に近いものもあり、香りの影響は小さいと言えます。
ごま油の栄養価と、色による違い
実は、ごま油の色によって、栄養価の違いは特にありません。
それならば効能を気にすることなく、用途によって油を選べますね!
ごまの栄養は豊富です。悪玉コレステロールを抑えるオレイン酸、体内で生成できない必須脂肪酸のリノール酸(注:この成分は現代の食生活では過剰摂取になりがちなので、摂りすぎ注意)を含みます。
リグナンには、肝臓を攻撃する活性酸素を除去して、肝機能を高める働きがあります。セサミンには抗酸化作用があり、ごま油が酸化しにくいのは、セサミンの活躍によるものと言えるでしょう。
「肌の老化の一因は、酸化によるもの」と、一度は聞いたことがあるかもしれません。ごまは抗酸化作用で体内の活性酸素を抑えることで、細胞が酸化してくすんだり、角質ができるのを防いでくれます。
さらに、ごま油は加熱しても酸化しにくいだけでなく、加熱するとこのセサミンが増えると言われています。加熱、非加熱どちらにも使いやすい油なのですね。
それぞれの良い点と活用法
それでは「黒」と「白」それぞれの良い点と、それを活かせる活用法を確認していきましょう。
ごま油「黒」の良い点と活用法
「黒」の特徴は何と言ってもやはり、その風味。これを活かした調理、香りづけに活躍します。
前述のとおり、加熱してもそのままでも使いやすいごま油は、炒め物、揚げ物、ドレッシングや和えものなど、幅広く活用できます。
香りで食欲をそそるだけでなく、和食や中華料理では、サラダ油をごま油に変えるだけで、ぐんと本格的になるケースも多いのです。
ごま油「白」の良い点と活用法
「白」の使い方にはピンとこない方が多いかもしれませんが、実はバターやサラダ油の代わりに、様々な料理やお菓子に使用可能な万能オイルなのです。
バターの代わりに使用すれば、バターで作るよりヘルシーなお菓子ができることは、意外と知られていません。
また「白」は香りがないので美容用途に使用しやすく、アーユルヴェーダでは全身のマッサージやうがいに使用されます。抗酸化作用により肌のくすみやクマを解消するなどの美容効果だけでなく、毛穴から体内に入って全身を巡り、体内に蓄積したアーマ(毒)を排出する働きをするのだとか。
アーユルヴェーダで行われるオイルうがいでは、ごま油の栄養素が粘膜を通して吸収され、口腔内のトラブルだけでなく、シワ対策や美肌効果、疲れ目改善や免疫アップなど、様々な効果が期待できると言われます。
無味無臭だから、全身に無理なく使用できるのですね。
まとめ
「世界最古の植物油」と言われる「ごま油」。多くの魅力があり、これだけ長く愛されているのも納得ですね。
油は日常的に摂取するもの。現代人の私たちは、加工食品などで無意識のうちに様々な油を摂取しています。まずは自宅で使用する油から、その特性を知って使い分け、美容や健康に活かしていきたいですね。