今回は、美容師としてのキャリア21年目、フリーランス美容師として9年目のタカハラさんにインタビューしました!次世代の美容師を育成する上で「他者に指示する前に、まずは自分がやってみる」をポリシーとして掲げるタカハラさん。従来の美容師のキャリアパスに疑問を持ち、辿り着いた自宅サロン経営。さらにはたった一人のお客様のために長野まで出張するものの、旅費などの出張費は一切とらないというビジネスモデル。そのカラクリとは?お話を伺いました。
タカハラさんがフリーランスとしての活動を始めたのはいつ頃からでしょうか?
フリーランスの活動は8年、今年で9年目になります。美容師さんにとっての起業といえば、今までは「お店を出すこと」でしたが、これからは違うと思っています。
フリーランスで働くといろんなことが見えてきて「この働き方がゴールでいいのか?」と疑問を感じ始めたのが3~4年前ですね。「フリーランスで一生を終えてはいけない」と思うようになり、美容師の仕事の方向性をいろいろ考えるようになりました。
独立してフリーランスになった初めの頃は良かったんです。手取りのお金や時間も増えるし。無駄な時間がなくなって、毎日が凄く充実していました。
しかし、「フリーランスで一生やっていけるのか?」「今が楽しければいいのか?」と思うようになり「明日、病気やケガをするかもしれない。それではマズイ」と考えるようになり、フリーランスをゴールにしてはいけないと思ったのです。とはいえ全く新しいことをやろうとしても、私はそこまで若くないですし、家族もいるので、多少なら転んでもいいけど、そこまで大きな転び方はもうできないのです。
ご家族がおられるタカハラさんは家庭を守らなくてはならない立場ですから、仕事を自分ひとりの問題として捉えず、考えるようになられたのですね。
そうです。だから私はお店を持とうと決めて、思いついたのが自宅サロンです。
自宅サロンについて詳しく教えてください。
オープンして1年間で50%の美容室が潰れるといわれています。3年後は10%の美容室しか残りません。3年間で9割が潰れるという美容業界なのに、コンビニの4~5倍ぐらいの美容室が存在しているのです。どうすれば潰れない店舗を作れるのかと考え、いろいろやっていくなかで、自宅サロンを思いつきました。
自宅サロンは、自宅に美容室を作るので、家賃と人件費が抑えられます。幸い妻も美容師なので、人件費の心配はありません。問題があるとしたら集客ぐらいですね。
私が自宅サロンを続けることが、美容師たちの将来の参考になればいいなと思っているんですよ。今まで自分でいろいろやってきて、失敗や成功をしてきました。そんな私の生き方を、これからの美容師たちに見てもらいたいんです。
こういう生き方もいいよねと思ってほしくて、私は身をもって伝えているつもりです。その結果、美容業界がよくなればいいなと思っています。
自宅サロンという試みがうまくいけば、真似する美容師さんが出てきそうですが。
私はどんどん真似してほしい。競合が出ても構いませんし、私でお手伝いできることがあればしたいと思っています。自宅サロンに関しては、その特性上、ウチの隣でやってもらっても競合にはならないんです。
何故かと言いますと、今は美容室ではなくて、美容師にお客様がつく時代なんです。もし私とまったく同じ人間が、私の隣で自宅サロンを始めたら競合になりますけど、それはあり得ないことなので(笑)。
タカハラさんは自宅サロンの運営に限らず、ご自身で実践されたことや成功体験を、若い美容師さんたちに伝えたい気持ちが強いんですね。
フリーランスになった頃から、美容業界の新しい生き方を体現していくというスタンスでいます。ビジネスやお金儲けではなくて、ライフスタイルを体現したいんです。自分をここまで育ててくれた美容業界をいい方向に変えたいという思いもあって、そのスタンスを続けています。
最近の美容師さんや美容業界については、どのようなお考えをお持ちですか?
まず教育がうまくいっていないと考えています。フリーランス美容師の増加や、大型店が潰れて小型化していくなかで、若い美容師たちへの教育ができなくなっています。
私の若いころは、スタイリスト1人につき6人ぐらいアシスタントいました。しかし、今はスタイリスト3人につきアシスタント1人。さらにお一人でされている小型店に至っては、アシスタントが居ない場合もあります。アシスタントを雇わなくなっているんです。そういう状況が長期化している以上、これからの美容業界にとって教育は大きな課題になってくると思います。
そんな中、タカハラさまとしては、これからの若い美容師さんたちはどのような生き方をすれば良いと思われますか?
これからの美容師は動くべきです。私は月に1回、浦和でシェアしている美容室に行って、接客しています。お客さんに呼ばれることがあれば、長野にだって行きます。長野には2ヵ月に1回ぐらいのペースで行ってますね。東京の店舗で私のお客さんだった方が、長野に帰ったのがきっかけですね。
長野に出張美容と聞くと「接客の場所はどうするんだろう?」と思われるかもしれませんが、場所は簡単に見つかるんです。長野の美容室で「席をひとつ貸してくれませんか。1日1万円でお願いします」と頼めば、みなさん喜んで席を貸してくれます。すると、その1回の出張でお客さんを4人ぐらい集めて、6万円ぐらい稼いで、美容室に1万円、交通費1万円を払っても4万円手元に残ります。Win-Winなんです。
若い美容師さんたちに対しては、タカハラさん自身が行動することで、これからの働き方を示しているのですね。
はい。お客さんを集めるという考え方を止めて、お客さんがいる場所に美容師自身が動けばいいんです。私の他にも4~5人の美容師がもう実践しています。ある美容師が年末年始に大阪の実家に帰るときに、私からアドバイスしました。「年末年始31~3日まで帰る予定だったら、1日早めに帰って、あっちで美容師の仕事しなさい」と「往復の交通費が3万円ぐらいだったら、向こうで美容室を借りて、地元の友達を集めてお客さんにすればタダで帰れるよ」と、そうやって発想を変える癖をつけるような指導をしています。
美容師さんの人脈を活かした合理的な方法ですね。
そうですね。例えば、私が長野に出張美容に行くときは、旅費などの出張費をお客さんからとっていません。その代わりにお客さんに「他にお客さんを3人紹介して」と言っています。東京で私のお客さんだった人に頼みます。その人に切ってもらいたいものだから、必死になって3人集めてくるんです。
おもしろい発想です!広告に頼らない新しい考えた方の集客方法ですね。
はい。そういった新しい発想での集客を、他の美容師さんにもどんどんやってもらいたいんです。そのためにも、私はまずは自分の体を使って実験をしていますね。美容師さんは人脈やお客さんとの関係性で成り立つ仕事でもあるので、その人脈をどんどん活かした集客方法をみんなが思いついて、挑戦していくのが理想だと思っています。
【タカハラさんのSNS情報など】
■フリーランス美容師
http://takaharahair.com/
■自宅サロン
http://hapill-ouchisalon.com/
■フリーランス美容師 Instagram
https://www.instagram.com/takugen_takahara/
■韓国語を話す美容師 Instagram
https://www.instagram.com/takkyon_takahara/