執筆者
管理栄養士 大屋佳奈 (おおや かな)
給食管理の仕事を主軸に特定保健指導やレシピ開発、国家試験対策についての情報発信、学生相談、料理教室アシスタント、コラム執筆など多岐にわたり活動中。また、イラストレーター・動画クリエイターとしても活動の幅を広げている。
質の良い睡眠にするためには?
ここからは、食事で睡眠の質を良くできる方法をいくつかご紹介したいと思います!
【朝ご飯にトリプトファンを!】
トリプトファン?新しい食べ物??…いいえ、トリプトファンとは私たちが体の中で合成することのできない必須アミノ酸のひとつで、睡眠に関わるメラトニンやセロトニンというホルモンの素になる栄養成分です。
メラトニンやセロトニンのお話をする前に、人間の体内時計(サーカディアンリズム)につて少しお話させてください。
私たちの身体にはサーカディアンリズム(体内時計)の機能が備わっています。私たち人間は、夜になると自然と眠くなり、朝なると自然と目が覚めます。他にも一定の間隔で空腹感を感じたり、女性の場合は一定の周期で月経がやってきます。このように人間が生まれながらにしてもっている身体リズムをサーカディアンリズムと呼んでいます。
メラトニン・セロトニンの分泌と効果は、私たちの体内時計と深く関係しているのです。
まずメラトニンは私たちが起床してから15時間くらい経つと分泌され、私たちに眠気を与え睡眠を安定させてくれるホルモンです。そしてセロトニンは体内時計のズレをリセットさせ、睡眠と覚醒のリズムを整えてくれるホルモンです。セロトニンは別名幸せホルモンと呼ばれており、精神に安心感を与え心の安定を保つ役割も担っています。
どちらのホルモンも、分泌に大きく関わってくるのが起床して浴びる『日光』です。朝起きて太陽光を浴びたタイミングで眠りを誘導するメラトニンは分泌をストップさせ、約15時間後にまた分泌が再開できるよう準備をしています。メラトニンとは逆に、セロトニンは太陽光を浴びたタイミングで分泌され日中すっきりとした気持ちで過ごせるように脳を活発化してくれます。
どちらも睡眠の質を上げるだけでなく、日中気持ち良く活動するためにはしっかりと分泌させることが必要なホルモンです。これらホルモンの素となるトリプトファンは前述した通り、私たちの身体で合成することができないため食事から摂取する必要があります。トリプトファンは牛乳やチーズなどの乳製品や、納豆や豆腐・豆乳などの大豆製品、カツオやマグロ、ナッツやバナナなどに含まれています。
メラトニンもセロトニンも、日中にトリプトファンから作られているのでトリプトファンを含む食材は朝ご飯として摂取することをお勧めしています。
また、朝食をしっかり摂る事でインスリンが分泌されます。この朝ごはんによって分泌されるインスリンは各臓器に働きかけて体内時計をスタートさせる言わば臓器の目覚まし機能のような役割をしてくれています。しっかり臓器が動き出すことで、排便も誘発されるので便通改善にも効果的です。
私が良く食べている朝食でお勧めなのはバナナヨーグルトです。プレーンのヨーグルトにバナナを一口大に切って入れ、グラノーラやはちみつなどをトッピングしています。朝どうしても時間がなくて朝食が食べられない日でも、バナナを1本だけでも食べることをお勧めします。
【大人こそ昼寝をすべし!昼寝最強のお供はコーヒー!】
小さい頃は幼稚園でお昼寝の時間がありましたよね。子供の頃のお昼寝も勿論大切ですが、日々働くビジネスパーソンである大人こそ、是非お昼寝を生活に取り入れて頂きたいです。お昼寝をすることで脳や身体の疲労感を取り、食後の睡魔やぼーっとしてしまいがちな午後をスッキリさせ仕事の作業効率を上げる効果が期待できます。
お昼寝は15分から20分が一番効果的だとされています。これ以上寝てしまうと身体は夜の睡眠のようにしっかり寝ようとしてしまうため、起きてもスッキリしないなど逆効果になってしまいます。お昼寝の時に最強の相棒となってくれるのがコーヒーです。コーヒーに含まれるカフェインが眠気を取ってくれることは多くの方が既にご存じかと思います。
しかし、日中の眠気覚ましにコーヒーを飲むという方、多いのではないでしょうか?
コーヒーを飲むポイントはお昼寝の前に飲むことなのです。
カフェインを摂取してから効果が現れるのが丁度15分から20分。あれ?お昼寝の最適時間と同じですね!コーヒーを飲んでから15分から20分程度の昼寝をすると、丁度起きるタイミングでカフェインの効果が現れるため、寝すぎを防ぎスッキリ起きられるようになります。個人差はありますが、カフェインの持続効果は3時間から4時間程度だとされているので午後の仕事を乗り切るには十分な時間ですね。微糖のコーヒーには糖質が多く入っているため、お昼寝のお供にはコーヒーはブラックをお勧めします。
食事以外では、寝る1、2時間前にしっかり湯船に浸かりしっかり身体を温めることや、寝具の見直しをしてみるのも睡眠の質を高める上で効果的です。
湯船にしっかり浸かることで、血流も良くなります。人は温まった身体が冷めていくと眠気がやってくるので夜の寝つきが悪い方にお勧めです。
人の一生のうち1/3は睡眠時間です。つまり、人生の1/3は寝具の上で過ごすのです。これほど長い時間を私たちと共にする寝具をしっかり整える事も睡眠の質を高めるために大切な要素となります。
例えば枕の高さが合っていないといった自分の睡眠に合わない寝具を使用することで本来疲れを取るはずの睡眠で首や肩、腰の痛みを招く原因となります。
他にも、自分の好きな香のアロマを炊いたり、好きな音楽を聞いて気持ちをリラックスさせたり、軽めのストレッチを行うなど、自分が一番気に入るナイトルーティーンを作るのも効果的ですね。
今はスマートフォンのアプリケーションやスマートウォッチや活動量計などで睡眠の質を計測することができます。ご自身の睡眠の質が良いのか悪いのか、具体的な数値で診てみたいといった方はこのようなテクノロジーを活用してみてもいいですね。
どうしても食べたくなった時の夜食
豆腐と卵の生姜スープ
どうしても我慢できない夜中の空腹時に食べる夜食のポイントは繊維質の少ない野菜やたんぱく質をメインとした『消化しやすい』『低カロリー』な食材を選択することです。
また、身体を温めることで満腹効果も得られるのでスープ系がお勧めです。
冬場は水溶き片栗粉を追加してとろみをつけるとスープが冷めにくくなるのでお勧めです。
材料(2人前)
・木綿豆腐 150g(1/2丁)
・卵 1個
・生姜チューブ 大さじ1
・水 300ml
・中華スープの素 小さじ2
・小ネギ お好みの量
作り方
①木綿豆腐はさいの目切りにし、卵はボウルに割って溶いておく
②鍋に水、生姜、中華スープの素を入れて沸騰させる
③沸騰したら火を弱めて豆腐を入れて3分ほど煮る
④ふつふつと煮立っている鍋の中をお箸で円を描くようにかき回しながら、もう一方の手で溶いた卵を少しずつ鍋に入れる。
⑤お好みで小ネギをトッピングして完成
いかがでしたでしょうか?
今回は睡眠の質を高めてくれる栄養成分としてトリプトファンをあげましたが、トリプトファンの他にも過去のコラムで紹介させて頂いたGABAや細胞内で働くミトコンドリアの量と質を高めてくれる還元型コエンザイムQ10なども睡眠の質を高める効果があるとされています。
GABAが含まれる食材は発芽玄米が代表的ですが、その他にもトマトやジャガイモなどの野菜、果物、キムチや漬物などの発酵食品にも含まれています。また、コエンザイムQ10はイワシやサバなどの青魚の他、豚肉・牛肉・ナッツ類に多く含まれています。中でも、ハマチの刺身には、還元型コエンザイムQ10の割合が比較的高く含まれます。
GABAやコエンザイムQ10/還元型コエンザイムQ10の補給にはサプリメントを上手く利用することもお勧めです。
過去のコラムの中でGABAやコエンザイムQ10が摂取できるレシピを紹介しているので参考にしてみて下さいね!
夜も寝付きやすく、朝も布団から出やすい秋は睡眠習慣を見直すにはもってこいの季節です。
寒くなる冬までに今一度ご自身の睡眠習慣、食習慣を見直して質の良い睡眠で毎日を快適に過ごしましょう!
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