執筆者
管理栄養士 大屋佳奈 (おおや かな)
給食管理の仕事を主軸に特定保健指導やレシピ開発、国家試験対策についての情報発信、学生相談、料理教室アシスタント、コラム執筆など多岐にわたり活動中。また、イラストレーター・動画クリエイターとしても活動の幅を広げている。
こんにちは!みなさんは最近注目されている「フィトケミカル」という言葉をご存じですか?
「ケミカル」なんて単語が入っているので、新発見された化学物質なのかな?と想像された方もいるかと思いますが、果物や野菜に含まれる列記とした天然の栄養成分なんですよ!
フィトケミカルは若さを保つ、免疫力を高めて強い体を作るなどのはたらきをする抗酸化作用などを持ち、健康に良いとされその機能に近年注目が集まっている機能性成分なのです。
本日はこのあまり聞きなれない栄養成分であるフィトケミカルについて、そしてフィトケミカルを含み女性に嬉しい栄養成分を豊富に含むザクロについてお話したいと思います。
フィトケミカルってどんな栄養成分?
フィトケミカル(phytochemical)とはフィト(phyto)=『植物』、ケミカル(chemical)=『化学成分』という意味で、名前からもわかる通り様々な野菜や果物、海の植物にあたる海藻などに含まれています。
フィトケミカルはどんな成分なのかというと、様々な野菜や果物、海藻類などが持つ特有の色味や香り成分、アク、辛味や苦み成分、ネバネバ成分などを指します。
これらの特徴は私たち人間にとっては『可愛くて美味しそうな色や香り』『苦みが癖になる美味しさ』『ネバネバ成分は健康に良い!』のようにポジティブな印象になっていますが、元々は植物が紫外線や乾燥などから受けるダメージを防ぐためだったり、虫や動物から食べられないようにしたりと、外界から受ける様々な害から身を守るために作り出したものなのです。
酸っぱい、苦い、辛いなどがこれにあたります。
私たち人間は調理ができるので、本来生ではとても食べられないようなものでも工夫して食してきましたが、一部の苦味や辛味は動物にとってはペッと吐き出してしまうものです。
苦みや辛み、酸っぱさは味付けのアクセントとして利用したりしていますね。
外敵から身を守る役割以外にも、わざと動物に見つけてもらって食べてもらえるように鮮やかな色を出したり、食欲をそそる香りを発したりしています。私たちが生で食べても美味しいと思うようなものは、それにあたると考えられています。
フィトケミカルがなぜ近年注目されているのか…、それはフィトケミカルがもつ抗酸化作用や免疫力向上が私たちの健康に良い影響を与える可能性に期待が集まり、炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維の6大栄養素に続く7番目の栄養素になり得る…と考えられているからです。ちなみにコラムでも度々登場するこの“抗酸化作用”という言葉は、“細胞を劣化させ、シミやシワなど身体の衰えの原因である活性酸素から身体を守ってくれるもの”と理解いただければ…と思います。
また、このほかにもフィトケミカルには、代謝の促進、免疫力向上、脳機能の強化、肥満予防など種類によってさまざまな働きがあると言われています。
フィトケミカルの種類は現在わかっているだけでも数千以上あると言われています。とっても多いですよね!
たくさんあるフィトケミカルをわかりやすくざっくりとしたグループに分けると、ポリフェノール、含硫化合物、カロテノイド、テルペン類、多糖類の5つに分けられます。
例えば、みなさんが良く耳にするようなカテキン(お茶の苦み成分)はポリフェノールの一種です。
では、この5つにグループにはどんな栄養成分が入っていて、それぞれどのような効果が期待されているのかを見ていきましょう!
ポリフェノール
ポリフェノールとは、植物が外界からのストレスである紫外線や乾燥などから身を守るために生成されるもので、特有の色や苦味の素になっています。
主なポリフェノール類としては、緑茶などの茶葉に含まれる苦みの成分カテキンや、大豆、乳製品に含まれていて植物性の女性ホルモン(エストロゲン)とも呼ばれているイソフラボン、そしてナスやブルーベリー、ザクロなどの鮮やかな赤色や青色、紫色を出している成分であるアントシアニン、コーヒーなどの渋みの成分であるクロロゲン酸、ゴマ特有の微量成分であるセサミンなどがあります。
含硫化合物
含硫化合物は主に切ったりすりおろしたりして細胞が破壊される際に生成される成分で、料理のアクセントになるような独特な香りや刺激のある辛みが特徴です。
主な含硫化合物としては、ニンニクやネギなどのツンとした特有の香りを出す成分であるアリシン、カイワレなどのスプラウトを食べたときにピリッとした辛味を出す成分であるスルフォラファン、また同じ辛味を出す成分であり大根やワサビなどに含まれるイソチオシアネートなどがあります。
カロテノイド
カロテノイドは野菜や果物に黄色や赤色、橙色の色を出す色素成分です。水に溶けにくく油に溶ける性質を持っているため、炒め物や焼き物に利用すると吸収効率が良くなります。
主なカロテノイドしては赤色や橙色を出す色素の成分で、トマトや柿、スイカなどにも含まれているリコピン(トマトのイメージが強いですよね…)や、橙色を出す色素成分でニンジンやカボチャ、みかんなどに含まれるβ-カロテン、黄色の色を出す色素成分でアボカドやケールなどに含まれるルテイン、同じく黄色の色を出す色素成分でみかんなどに含まれるβ-クリプトキサンチンなどがあります。
テルペン類
柑橘類などの特有の香りや苦味などの成分で、リラックス効果などが期待されています。
主なテルペン類としては、レモンやゆず、グレープフルーツなどの皮に含まれていて、柑橘系ならではの香りを出す成分であるリモネンなどがあります。
多糖類
多糖類とは炭水化物の一種です。
主な多糖類としては、メカブやモズクなどを切った時にヌルヌルネバネバを出す成分であるフコイダンや、キノコ類や大麦などに含まれるβ-グルカン、ゴボウやニンニク、玉ねぎなどに含まれるイヌリンなどがあります。
フコイダン、β-グルカン、イヌリンはいずれも水に溶けやすい性質を持つ水溶性食物繊維の一種です。
ひ~!!一部抜粋でのご紹介でしたがほんとにたくさんありましたね…!!!
もうどれが何だったか記憶が抜けてしまっても当然です、それだけフィトケミカルには種類がたくさんあって、現在も機能や効能について研究中の栄養成分も存在しています。
食品によって様々ですが、上記で紹介したフィトケミカル達には血中コレステロールの低下や血圧の上昇を抑える働きやコレステロール低下作用、抗ガン作用、殺菌作用、肝臓保護作用、生活習慣病予防などなど、実に幅広い効果が期待されているのです。
特にイソフラボンはコラムでも良く話題に上がる栄養成分ですね!女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをもっていて、骨粗鬆症の予防や更年期症状・生理不順・PMS(月経前症候群)などの緩和が期待されるものでしたね。
イソフラボンもフィトケミカルの一員だったとは驚きです!
フィトケミカルの研究は2000年代から盛んに行われ始めて、『フィトケミカル』でなんと3万7千を超える論文がヒットするんですよ!これからの研究に期待が高まりますね!
キーワード:7色の野菜・果物
こんなにたくさんあるフィトケミカルをどうやって普段の食事に取り込めばいいのか難しい!まず覚えられないよ!と思った方、安心して下さい!
フィトケミカルは最初にお話した通り植物の色素の成分でもあります。
なので、野菜や果物の『色』を判断基準の1つにして考えていただくとわかりやすいです!
野菜や果物に含まれる色素は大きく分けて『赤、橙、黄、緑、紫、黒、白』の全7色。
例えば、赤い野菜といえばトマトやいちご、橙ならにんじん、黄色ならとうもろこし、緑はほうれん草、紫はナスやブルーベリー、黒はごまやゴボウ、白は大根….のように7色の色に注目してすべての色でバランスよく食材を選ぶとフィトケミカルをバランスよく取ることができるのです。
ぜひ、日々の食事の中で食材の彩りを意識して摂取してみてください!
さて、ここまではフィトケミカルの基本について学んで頂きました。
ここからは、フィトケミカルのなかでもポリフェノールの一つであるアントシアニンを含み、これからの時期が旬の果物であるザクロについてお話したいと思います!
ザクロとは??
みなさんはザクロという果物を見たことがありますか??
住んでいる地域によっては、ザクロの実がそのままの姿で市場に出回っている場面に出くわすことがほとんどなく、どんな見た目をしているのか知らない方もいらっしゃるかと思います。
ザクロの旬は9月~11月頭くらいで、その実は直径10cm程。
先が尖った球形の果実をつけます。果実は熟すと果皮が自然と割れ、中から赤く透明な外種皮に包まれた宝石のように輝く小さな種子がたくさん出てきます。
この種子の外種皮が食べられる部分で、特有の食感と甘酸っぱさが特徴です。
ザクロは、外種皮が鮮やかな赤色であることから生のまま前菜やデザートのトッピングとして利用されています。生の状態よりも、果汁がジュースやシャーベット、ソース、お酢、サプリメントや美容品などに加工されて流通している方が馴染みあるかもしれません。
前編はここまで!
後編は『ザクロに含まれる栄養成分と効果』のお話から再開させていただきますね!