執筆者
管理栄養士 大屋佳奈 (おおや かな)
給食管理の仕事を主軸に特定保健指導やレシピ開発、国家試験対策についての情報発信、学生相談、料理教室アシスタント、コラム執筆など多岐にわたり活動中。また、イラストレーター・動画クリエイターとしても活動の幅を広げている。
皆さん、ラブレという乳酸菌はご存じですか?
最近テレビやネットでもよく耳にする乳酸菌。皆さんも乳酸菌と聞くとなんとなく身体に良いイメージがあるかと思います。
乳酸菌といえばどんな食品が思い浮かびますか?
ヨーグルトやチーズなどの乳製品が有名ですよね。他にも日本の伝統食である漬物や納豆、味噌にも豊富に乳酸菌が含まれています。最近では乳酸菌入りのチョコレートなんかも販売されていてとても身近に感じるようになりましたね。
乳酸菌は主に小腸に住んでおり、便秘改善、免疫活性、アレルギー発症の緩和、血中コレステロールの低下など様々な効果が知られています。
本記事は、ダイエットしたい方だけでなく、体の中から綺麗になりたい方にもぜひ参考にしていただきたい内容です。
乳酸菌の中でも今回はラブレという乳酸菌に着目してお話したいと思います。
そもそも乳酸菌ってなに?
ラブレのお話に入る前に、そもそも乳酸菌とは?というところからお話していきたいと思います。
人の身体の中には私達以外の生物(細菌)達がたくさん住んでいます。
その数なんと100兆個以上!人間の身体を構成している細胞の数が約37兆個といわれているので、それ以上の細菌が私達の身体のあちこちに住んでいるなんて驚きですよね。
一説によると、私達の体重のうち約2㎏は細菌の重さだと言われています。それほど私達の身体に深く関与しているということですね。
乳酸菌はそんな細菌の中の一種です。
乳酸菌とは、糖類を分解して乳酸を作る細菌の総称で、乳酸菌だけでも200種類以上存在します。その中に今回お話するラブレという種類があります。
乳酸菌は私達の身体に有益な働きをしてくれることから善玉菌といわれており、腸内環境の改善をしてくれます。
また、乳酸菌は腸内で有害物質を作る悪玉菌を減らすことで腸の働きを活発にし、その結果消化吸収が促進され、便通も改善されます。便通が改善されることで、美肌効果も期待できますね。
乳酸菌で腸内環境を整え免疫力up!
最近では腸内環境を整える『腸活』という言葉が流行るなど、腸内環境についての関心が高まっています。
では、なぜ腸内環境を整える事が大切なのでしょうか?
腸は食べ物を消化して栄養を吸収し、そこで出たカスや老廃物を排出してくれる臓器です。
これ以外にも様々な機能を持っており、例えば…
免疫機能の調整
神経伝達物質の合成
が代表的です。
私達の体には腸以外にも病原菌やウイルスを排除する免疫細胞が存在していますが、人間の免疫細胞の約6割は腸に集まっていると言われています。
腸内環境を整えることで免疫細胞が正常に働き、有害なウイルスや細菌から体を守ってくれるため、風邪やインフルエンザ予防に期待されています。
この免疫システムと、腸内に数多く生息する乳酸菌等の腸内細菌とは密接な関係があり、全身の健康にも関与することが知られています。
近年では感染症を予防するために、薬やワクチンの開発だけでなく、衛生環境も格段に整備されました。そのため、昔の人と比較すると、現代の人は環境中の微生物に触れ、体内に取り入れる機会が減少しています。そのため、人の身体の中の細菌の種類が減少・単調化してきているのです。
本来であれば、腸内フローラという言葉があるように、腸の中に住む細菌は様々な種類の花が咲き乱れるお花畑のように多くの細菌に満ち溢れてこその腸機能です。
腸内の細菌を増やし、腸内フローラを整えることも腸活の1種です。腸活をすることで、美肌、見た目の若々しさ、便秘改善、ダイエット効果、アレルギーや風邪の予防&改善など、健康にも美容にも嬉しいメリットがたくさんあるのです。
乳酸菌「ラブレ」とは?
ここからは乳酸菌ラブレについてお話していきます。
ラブレとは京都の伝統的なお漬物である『すぐき漬け』から分離した植物由来乳酸菌のことを言います。
すぐき漬けとは、すぐき菜という野菜をお漬物にしたものです。すぐき菜はかぶらの一種で、京都上賀茂の地で桃山時代に社家の手により栽培され始めたのが起源と言われています。
江戸時代に『すぐきはたとえ1本といえども他村へ持ち出すことを禁ず』と書かれた御触書が出され、すぐき菜が門外不出の固有種として京都・上賀茂で守られるようになりました。
発見のきっかけは、ラブレ菌の発見者である岸田綱太郎博士が、『京都の男性は全国2位の長寿』という新聞を見て『京都人が好む漬物の中に健康維持に関わるものがあるのでは?』と京都の漬物をひとつひとつ調べたことです。そして1993年にすぐき漬からラブレ菌を発見しました。
ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)というのが正式名称。愛称の「ラブレ菌」は、頭文字をとって名づけられました。
ラブレ菌は腸に届きやすい植物由来の乳酸菌
ラブレ菌は植物性由来の乳酸菌であることが最大の特徴です。
なぜ植物性由来の乳酸菌が良いのでしょうか?
それは動物性由来の乳酸菌と比べて生きたまま腸に届き滞在しやすいからです。その理由をこれから詳しく説明していきます。
乳酸菌はその生息場所によって動物性乳酸菌と植物性乳酸菌の2つに分類されることはご存知ですか?
ヨーグルトやチーズなど、動物質の中で生きる乳酸菌は『動物性乳酸菌』。
漬物や味噌、醤油など植物質の中で生きる乳酸菌を『植物性乳酸菌』と呼んでいます。
過酷な環境でも耐え抜く強さ
植物性乳酸菌と動物性乳酸菌は、普段生息している環境がまったく違います。
例えば、動物性乳酸菌は主にミルクという非常に恵まれた環境下で生きています。そもそもミルクとは生まれたての動物が口にする食品であり、アミノ酸やビタミン、ミネラルなどの栄養素がすべて完璧に揃っています。
それに対して植物というのは、ミルクに比べると過酷な環境になります。植物性乳酸菌は漬物など塩分や酸が高い過酷な環境の中でも生き抜いて生育することができます。
そのような過酷な環境下でも生育しているのが植物性乳酸菌ですから、一般の微生物にとって生存しにくい環境下でも耐えられる能力を持っているわけですね。
私たちの身体の中で最も過酷な環境だと言える場所が「胃」です。胃には食べ物だけでなく、食べ物と一緒に入ってきたウイルスや細菌を溶かす胃酸があります。
さらに胃の次に待っている十二指腸では、胃で酸性になった溶解物を強アルカリにさらして中和しています。
植物性乳酸菌はこのような過酷な環境でも死滅することなく腸まで届く力を持っています。
胃液に強い植物性乳酸菌はラブレ菌の他にも多数存在しているのですが、ラブレ菌の凄い所はその先の腸環境での生存力・増殖力が他の乳酸菌より高いことです。
つまり、ラブレ菌は他の乳酸菌と比べて生きたまま腸に届きやすく、腸での滞在期間が長く増殖しやすいということが特徴として挙げられます。
ラブレ菌の効果
整腸作用
ラブレ菌を摂取することで腸内環境が整い、便秘や腹痛、下痢といった症状が改善することが期待できます。
有害菌に対しての抗菌作用
食中毒の原因菌として有名な黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌、ウェルシュ菌などに対して高い抗菌作用が期待できます。
免疫賦活作用(※)
抗ウイルス・抗癌細胞作用を持つIFN-αというタンパク質の生産の活性化を促したり、細菌やウイルスに感染した細胞・癌化した細胞を選択的に破壊し、感染・癌から身体を守ってくれるNK細胞の活性が期待できます。※免疫賦活作用とは:免疫の働きを高めて活性化させる効果のこと
抗インフルエンザ作用
体内に侵入したウイルスの増殖抑制により、インフルエンザ感染の予防が期待できます。
また、ウイルスによる感染時の症状を軽減してくれる効果が期待できます。