執筆者
管理栄養士 大屋佳奈 (おおや かな)
給食管理の仕事を主軸に特定保健指導やレシピ開発、国家試験対策についての情報発信、学生相談、料理教室アシスタント、コラム執筆など多岐にわたり活動中。また、イラストレーター・動画クリエイターとしても活動の幅を広げている。
こんにちは!皆さんは『ファスティング』という言葉を耳にしたことはありますか?
ファスティングという言葉の意味は知らなくても、最近健康や美容のためにと『1日1食』、または『1日2食』生活や、『16時間断食ダイエット』『プチ断食』『酵素ファスティング』など、様々な方法が流行っているのでどれか一度は見聞きしたことがあると思います。
これらは方法も名前も様々ですが、全て『ファスティング』です。
では、なぜこんなにもファスティングが世間の注目を浴びているのでしょうか?
今回はファスティングってなんだろう?何がそんなに良いんだろう?といった基礎的なお話と、ファスティングにトライするならぜひ試して頂きたい私大屋オリジナルの『超プチプチファスティング』についてお話したいと思います!
ファスティング(断食)とは?
現在、美容や健康増進目的で流行しているファスティングの方法は実に多様化しており、1日のうち1〜2食を抜く簡単なものから、1日~数日の間の長期間で固形の食べ物を全く摂らないものや、特定の食べ物の摂取を辞める方法等があります。
無知識な状態や間違った方法でのファスティング挑戦には注意が必要な部分もありますが、正しくファスティングを行う事によって得られる効果として、以下の事が挙げられます。
ファスティングのメリット
・固形物を摂取しないことで消化器官を休ませリフレッシュさせる効果
・デトックス効果
・排泄機能の改善
・老化防止、病気になりにくい身体作り
・ガン予防効果
・疲労回復効果
・健康寿命の延長
…etc.
では、なぜ食事を抜く、または極端に減らすことが美容や健康に良いとされているのでしょうか?
その謎を解くキーワードは『オートファジー』です。
オートファジーってなに??
『オートファジー』はファスティングとセットで書かれることの多いキーワードです。
オートファジーはギリシャ語で、“自らを食べる”という意味になります。
“自らを食べる(オートファジー)”とはいったいどういうことでしょうか?
簡潔に言うと、身体から要らないものを分解して、新しく体を作るために再利用することです。
少し詳しく見ていきましょう!
私たちの身体を構成する組織(骨、筋肉、皮膚、臓器、髪の毛や爪、粘膜など)の細胞が常にフレッシュな状態で健康に生きていくためには、細胞そのものを入れ替えることも必要ですが、古くなったり、壊れてしまった“細胞の中身”を新しく正常に機能するものに適宜入れ替えが必要です。
これらの不良・不要な部品達をお掃除してくれる作用がこのオートファジーなのです。
具体的には、細胞内の不良・不要品をランダムにゴミ袋(膜)で取り囲んで回収し、細胞内に存在するリソソームという名前のリサイクル工場で分解し、新しい部品を作るための材料として再利用されると考えられています。
オートファジーの対象となる不良・不要な “細胞の中身”とは、酵素や運搬係などとして働いているたんぱく質や、私たちが活動するためのエネルギーを作り出す工場の役割をしているミトコンドリアなどが対象です。
中でも、細胞内で古くなってしまったり損傷してしまったりして機能が衰えたミトコンドリアは、活性酸素を大量に生み出しているのにエネルギー産生効率が低下しています。この活性酸素はこのコラムシリーズでも度々触れている身体をサビさせて老化に繋がる物質です。
このようにオートファジーは身体にとって多すぎると害になる活性酸素を大量に出してしまう機能低下した古いミトコンドリアを分解して、新しくフレッシュなミトコンドリアの材料にしてくれるためお肌や髪だけでなく全身の若返り効果や美容効果も期待されているのです。
新陳代謝としての細胞内のお掃除は基本的には常時少しずつ体の中で行われているのですが、身体に栄養が入ってこない“飢餓状態”の時にオートファジーは活発に行われるとされており、ファスティングで“飢餓状態”を作ることで身体中の細胞に溜まってしまっている不良・不要品を大掃除してもらおう!というのがファスティングの目的の一つとなっています。
なぜ飢餓状態でオートファジーが活性化するの??
なぜオートファジーは飢餓状態にならないと活発に作用してくれないのでしょうか?
これは、オートファジーの本来の目的に答えがあります。
そもそもオートファジーは、食べ物が手に入らない“飢餓状態”の時に私たちがすぐ死ぬことなく生き残るために自身の中にある不要なものから順番に生きるために必要なものへ再利用させるための作用です。
そのため、現代の私たちのようにいつでも食事がとれる環境や3食不自由なく栄養を摂取できている環境下ではオートファジーのはたらきは弱くなっています。
飢餓状態によるオートファジーの活性化は、大体最後の食事から12~16時間以降とされています。特に、断食時間が16時間でオートファジーの活性化が最大となるため「16時間断食」というワードはここから来ています。
ダイエット目的でファスティングを行いたい方、ちょっと待って!!
前半でもお話した通り、ファスティングによるオートファジーの目的は “普段使い過ぎている胃腸を休めて、細胞の中のお掃除をしよう!”ということであり、ダイエットが主目的ではありません。その点を理解してファスティングを行うのであれば問題ありません。
最近は様々なファスティング方法が世に出ていますが、“ダイエット”と謳われている方法も少なくないため、減量目的でファスティングを実践しようと思われる方も少なくありません。
よく取り上げられているファスティング方法は1日に1食以上の欠食を推奨するものがほとんどなので、それらの方法を実践すれば摂取カロリーが減り身体から水分も抜けるため一時的にダイエット効果が得られることは事実です。
しかし、ファスティングのつもりでただ食事を欠食しているだけだと、栄養不足から筋肉量が減少し疲れやすく太りやすい身体になってしまったり、代謝不良で肌荒れなどを引き起こす原因となってしまいます。
また、ファスティングには『準備食』と『回復食』というものがあり、実際に食事を抜く前後数日間で実施しなければならない食事があります。この準備食と回復食を食べる期間をしっかり正しく摂らなければリバウンドに繋がってしまったり、長時間絶食の状態からいきなり高栄養な食べ物を摂取した際には身体に大きな負担となります。
このように、欠食するだけで減量できるという一見単純な方法には、リバウンドや健康悪化などに繋がりかねない落とし穴があります。
では、このような落とし穴を回避しつつ、もっと簡単で安全、かつ健康的な正しいファスティングを行うにはどうすれば…とお考えのあなたに朗報です!
減量を目的とした無理な欠食を行うのではなく、これから紹介する『超プチプチファスティング』で食習慣の改善をしてみて下さい!
普段忙しくて外食やファストフードなどが中心の食生活になってしまっているかたは、食習慣を改善させるだけでも胃腸の負担を軽減させることができます。
まずはゆっくり時間のとれる休日だけでも『超プチプチファスティング』で食事の内容に気を配り胃腸を休め、オートファジーによる細胞の中のお掃除をしましょう!
前編はここまで!
後編は『超プチプチファスティング』のお話から再開させていただきますね!